指先の小学生女児

2022年12月16日金曜日

ビューティー よしなしごと

 メイク好きなのに、なぜか爪先に関してはアンタッチャブルでした。

時折爪を磨く、とか、目立たない色のポリッシュを自分でちょちょっと雑に塗るくらい。

爪をおしゃれにしてる方はとてもうらやましいし、デザインされたネイル、とてもかわいいとは思うのに。
わたしは昔から自分の手を愛せませんでした。
分厚い掌に、ふと短い指、
ごつごつした節。
好きなところがひとつもない。
それなのに手って、いやでもいつも目に入るんですよね。

自分の最大のコンプレックスである
「ごつくてずんぐり」
をそのまま体現するものが目に入るたび、若いときは、可愛くなれないことに悲しみ、年がいってからは、可愛さについてはあきらめて、せめて清潔感を保つべく、せっせとハンドケアする日々でした。

セルフネイルの道具もたくさんある世の中になりましたが
愛せないパーツに手をかけるのは気持ちがアガらないし、
ネイルサロンに行っても
お店の人に、こんなみっともない手にネイルなんてって内心笑われちゃうんじゃないかという謎の被害妄想で
ビビっていました、ずっと。

 昨年の秋のこと。
お会いしたかった方と初めてお会いできることになり
「もしかしてお茶などご一緒できるだろうか・・・」
とウキウキ・ドキドキし
ハッと、
その時に指先は目に入るだろうか、と恥じらいました。
しかし同時に、

「みっともない指なれど、
せめて、その先には色を彩りたい。
野に咲く地味な花の色であっても。
それには、他人さまの手を借りろ。
卑屈になってもチャームは上がらぬ。
金のチカラで小さくても自信を買え。

という謎ポエムからの、
イナズマのような天啓がおりました。
(おおげさ) 

生まれて初めておっかなびっくり
ネイルサロンの門をたたきました。
若いネイリストさんは、とても親切にしてくださって
わたしの色のチョイスをほめてくださったり
爪が丈夫だからきっとキレイになりますよ、と
力づけてくださったりしました。

ジェルネイルでお願いし、施術が始まりました。
さくさくと手早く、きれいな色がのせられていく自分の爪。
ジェルネイルは、ゲル状の樹脂を硬化させることで形成します。
色のついた固い水飴みたいなものを、

塗る→紫外線ライトで硬化→塗る

を繰り返していきます。
紫外線ライトは、いわば、とても小型のコタツみたいなもの。
そこに手をつっこんで光をあてます。
塗っている間は動かせない手も、ライトを当てる前には一瞬フリーになる訳です。
その時に、
まだ途中であるにも関わらず、
自分の爪をしげしげ近くで眺めては
こみあげてくる内なる喜びの声を抑えられませんでした。

「色かわいいー」
「うれしいーーー」 

よくいえばプリミティブな、
悪くいえばIQの低い感嘆詞・・・

やがてできあがった、初めてのジェルネイル。


わあああーーー・・・(こみあげ中)

この気持ちはなんだろう。
テンションがブチ上がるとはこのことか。
5,000円でおつりがくる価格(初回限定価格)でこのときめきが買えるのなら、
なんてコスパがいいんだろう。 
自分の指先を見ては嬉しい気持ちになる。
生まれて初めてのことでした。

分厚い掌に、ふと短い指、
ごつごつした節
であることに全く変わりはないのですが
いやでもいつも目に入る
パーツであることの、
ネガポジが完全に逆転しました。
きれいな色、
ジェルネイルで盛り上げてもらったため
貝殻がついているみたい。

指先を動かすたびに目に入る。
嬉しい。嬉しい。
うきうきする。

髪型がキマるとか、肌調子がいいとか。
もちろんそれもウキウキなんですが
ウキウキの種類が別ジャンル。

これはいったいなんだろう・・・

何度も言いますが、
わたしにとっては、メイク・スキンケアを始めとする美容全般やおしゃれは、
大事な娯楽です。
娯楽ではあるのですが
年齢を重ねるにつれ、

「まずなによりも冷徹に己を他人の目で見つめること」
「努力をしないことよりも
 その努力感が外に漏れ出ることを醜悪と心得よ」
「美容面の努力とその成果は等価ではない。娯楽と捉えられない努力はやめておけ」
「雑な盛りは大事故につながるが
 だからといって、なにもしない=ナチュラル美にはもうならない」
「引くために足していく」
・・・
(長大な巻物のように続く) 

・・・というふうに、
複雑でめんどくさい哲学が発生しています。
そのため、
キレイだなと思ったものがあっても
「コレを身につけてチャームアップするのか」
「見た目や雰囲気と齟齬は発生しないのか」
とかを考えてしまい、
ウキウキに身を任せて突き進むことはできません。

時折、 だーーーーーっ!!
めんどくせえええええーーーー!! 

と行儀悪く叫びたくなるのです。
ネイルも美容のひとつではあるのですが
めんどくさい哲学は一切なし。
もっと喜びがシンプル。
始めて日が浅い、ということもあるでしょうが単純に、
爪に好きなキレイな色が塗られている、
キラキラしている
ということがうれしい。

似合ってるか似合ってないかは問題じゃない。
周りをギョッとさせたらダメだけど。
わたしが好きなら、オールオーケー。

というか、
指先を見てただ嬉しい気持ちになる
この気持ちは、でも、遠い日に記憶がある・・・
爪に赤マジックを塗ったとき・・・?
いやいや、そうではなくて・・・
あ!アレだ!!
おもちゃのキラキラ指輪をつけたときの気持ちだ!
夜店で売ってるキラキラ指輪。

箱にたくさんの指輪が入っていた。
買えなくて、ひとつだけ買ったものをつけてずっとそれを眺めていた。
いつかこれを全部の指にはめてみたい、という憧れ。 

長い年月を経て、それをかなえているんだな、ネイルで。 

自分ルールで

・長さは極限まで短くする
・なんとなくテーマを決める
 (季節や行事など)
・ジェルをコテコテに分厚くしてもらい
 自爪感は薄くする

というこだわりがあり
感覚としては、
自爪をキレイにするというよりは
指先にデコレーションした殻をくっつけている、そんな気持ち。
アクセサリーというかわたしの楽しいおもちゃ。
指先にだけは、
小学生女児感覚を宿らせて
単純にキラキラやきれいな色がついてて
うれしい、という気持ちでながめてます。





こんな感じで楽しく継続中です。
サッカーのワールドカップの折、
高円宮妃久子さまのステキなワンショット。



日本サッカー協会の名誉総裁でいらっしゃるのね。 サムライブルーのネイル!!
本気のカメラも素敵・・・
年齢を重ねた手にネイル、とても奥行きがあると思いました。 やんごとなきお妃さまであっても、
手は、年月を重ねた味わいが出る・・・
わたしは皇室ファンなので、ちょっと詳しいのですが(笑)
40代の若さで亡くなられた高円宮さまの数多い役職
(スポーツマンでいらしたせいかスポーツ関係が多いような?)を
そのまま引き継がれていらっしゃる久子さま。
深窓の姫君が多い印象の親王妃にあって、テキパキ・アクティブなイメージがあり畏れ多いことではありますが、憧れの女性です。
書類をめくり、ご趣味の写真を撮り
カメラの手入れをなさり、
お料理をなさったりしているのだと
想像ができます。
背の君を亡くされてからも、
一生懸命生活をなさってきた人の手です。 畏れ多いことですが
わたしだって同じです。
背の君は元気に暮らしていますが(笑)
わたしは、
このきれいではない手で、
生活の糧を稼ぎ、食べものを料し、
着るものを手入れし、
十分にはできませんが、
一生懸命生活を回しています。

指先におもちゃをくっつけて
愛でてやってもいいではないか、と思うのです。

自分くらいは、自分のパーツを愛して
大事にしてやって、労わって。
できるなら死ぬまで
そうやって手入れして生きていきたいなあ。

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