3年ぶりの峨山道 その4

2022年10月27日木曜日

トレラン 峨山道トレイルラン 山歩き

 夕闇迫る舗装路から林道へ。
かろうじて、残照の尾っぽの、
かそけき明るさが届いていますが、
時刻は17:00すぎ、ほどなく暗闇になるでしょう。
単独では日没後の行動はしませんが、周りに人は全く見当たらないし
続けちゃったからには、次の68km金丸エイドまで10km進むしかない。
山中を進みながら、ヘッデンの灯りの範囲しか見えなくなりました。

真暗になった・・・

知らない山道でひとりぼっち。
怖くないといえばウソになりますが
暗さに対する恐怖なんて、10分もすればマヒる。

来ちゃったからには進まなければならないし進むのであれば、今しなければならないことの優先順位はハッキリしています。

第1に、自分が進む2mの安全を担保する。
第2に、自分が進む20mの正しいルートを確保する。

早く、とか、関門に間に合う、とかは2の次3の次。
とにかく自身にけががない状態で
安全なルートで山を抜けること。
それだけです。

腹がくくれたので
心はとてもクリアでした。

ヘッデンは下目に向けて、2m先まで安心して進んでいいかを慎重に確認しつつ
上目に向け直して分岐がないかを確認して。
100mごとくらいに、大会のマーカーがぶら下がっており
なんと行き届いたことに、反射板材みたいなものが光っていました。

本当に信頼できる・・・

ルートに対する不安がなければ、ただがんばって進めばいい。
鉄塔地獄はまだ続いているので
上る→鉄塔→下る、また上る→鉄塔→下る、また上る。
鉄塔から下るときは、作業道が何本か分岐してる箇所があるので
ヤマレコマップでオンルートにいることを必ず確認して。
(まちがったら登り返すのは体力・メンタル削られる)

時折上りがきつい箇所が出てくるので
ラクではありませんでしたが、ヘッデンの灯りに、
道を横切る、リス?イタチ?を見たり、
木々の間を飛ぶ、鳥?ムササビ?を見たり、ナイトパートならではの
不思議な時間を過ごしました。

とはいえ、早く山を出たい。
いつ終わるんだろう・・・

ルート確認と残りの距離と、あとどのくらいアップダウンを繰り返すのか。
ヤマレコのこの画面を、穴のあくほど見つめていました。

あとどのくらい移動するのか…


あとどのくらい上るのか…


あーーまた上りだあーーー
とうんざりした上りのトップには
スタッフが立っておられて
「次のエイドまで2kmを切りましたよ!」と励まして下さって
とてもホッとしました。
遅い時間まで誘導ありがとうございました!
そこから300mくらいのところで
65km表示が出ていたことなんか気にしてませんからね!
(次のエイドは68km地点)

やっと舗装路に下りて、しばらく集落の中を行き、
19:18 (スタートから13時間18分)、7A 68km 金丸エイドに
到着しました。

68km金丸 13:18'00"

この10km2:30、決して早くはないのですが
初見の夜間山間部、単独で、くさらずに冷静に進めた。
(自分比)
このレース唯一、自分をほめていい区間でした。
よくやった、わたし。

しかし、関門閉鎖まで残り12分、制限時間まで72分。
残り距離5km。

全舗装路なら、歩き走りでなんとか間に合う感じですが
確かゴール永光寺の直前は山間部だった気が。
(前回は逆方向で、永光寺から金丸に向けて来た)
それがどんな道だったか全く思い出せない・・・

計測はしましたが、やはりここでも、
もうやめるべきか
と逡巡しました。

だけどもう、間に合わなくてもいい。
ここまで来たら最後まで自分の脚で。

そのまま舗装路を進み始めました。
後ろから来る方は、みんな走っておられます。
走らなきゃ間に合わないかな?
走ってはみるのですが、すぐ息が上がります。
早歩きで進むしかない・・・

2kmほどで、トレイルの入り口にさしかかりました。
「スイーパー」とゼッケンをつけた方が立っておられて

ルートデータもってますか?
あと3km38分!

と声をかけて下さいました。
キロ12分。
上りがあったら、とうてい間に合わない・・・
あきらめかけていたとはいえ、事実が明らかになると
やっぱりしょんぼりします。
走らなかった(走れなかった)のだから仕方ない・・・

再び真暗な山中の道、転ばないように
早歩きを維持するので精一杯でした。
舗装路の上りを上り始めたとき。
「そっちじゃないですよ!!」と声がかかりました。

あっぶねーーーーー

どうやら先ほどのスイーパーさんが
わたしのヘッデンの灯りを見つけて下さり大声で声掛けして下さった模様。

※後になって思えば、
ロストで道迷い、はないにしても
(ヤマレコのアラームがあがるので)
ここでもっと深くまで入っていたら、
恐らく制限時間は
オーバーしていたと思います。
そういう意味でも、このスイーパーさんには本当に感謝しています。

軌道修正して、とぼとぼ山道を早歩き。
後方から、なんと久しぶりに、複数人の話し声がします。
どうやら、わたしの後方にもまだ何人かランナーがいらっしゃって
スイーパーさんと道行きされている模様。
「絶対に早歩きペースを落とさないでください」
とか声が聞こえます。

・・・ってことは、よ?

後ろの集団に追いつかれなければ、
制限時間に間に合うって・・・
コト・・・?
(ちいかわ風)

どうにか間に合いたい、という気持ちが強くなりました。
ですが哀しいかな、
ペースを上げているつもりが、次第に声が近づいてきます。

「これからだんだん上りになります。」
「最後にガツン、ときつくなるけど
 そこがラスボスですから!」

という声が聞こえてきます。
まさしく、わたしは上り始めていたので
えーこれからまだ上るのか、と思いました。
果たして、ガッツーンと坂はきつくなり。
一生懸命上るのですが、脚は攣りかけ。
足の置き場所を間違えて踏み外してしまい、転んでひざをついてしまいました。
上りがきついので、ケガはないのですが
邪魔になる、と横にずれたら
もう動けなくなってしまいました。

集団がわたしを追い越しながら
「ファイト!」
「あきらめないで!」
と声をかけて下さいました。

もういいんです。
もう無理です・・・
ここまでよくがんばったよ自分・・・

とか、
自己憐憫に浸ろうとした、その時。

頭上から、
「ここからタイラになってるよーー!」と
追い越していったランナーさんのひとりがわたしに叫んで下さる声が聞こえました。

反射的に身を起こして、
上り始めて。(ゲンキン)

本当に上りは終わっており、下り基調の林道。
走って下さい!とスイーパーさんが
ゲキを飛ばしてくれ、前の人に着いて
走り始めました。
(走れるやん・・・)
ランナーさんは、男性2人女性1人。
走っているわたしに
「復活してよかったねえ」
「絶対みんなでゴールしましょう!」
と声をかけて下さり、
うう・・・
見ず知らずのわたしに・・・
ありがとうございます(涙)

お寺の敷地に入りましたが、
いったん下まで下って、階段を上って、ゴール
というコース。
下まで下りきったとき、
スイーパーさんが
「あと6分!
カッコよくゴールしてください!」
と最後のゲキを飛ばして下さいました。

階段は、手すりにすがりながら、ヨレヨレで上がったので、まったくカッコよくありませんでしたが
10分前まで、絶対無理だ、
と思っていたのに
まさかのまさかの、完走ゴール。

ウソだろう・・・

ほんっっっとに、ギリギリのゴール。
命運をともに戦った(オオゲサ)
ギリギリパーティーは、
感激の涙を流す・・・
こともなく、ただ、

「間に合ったねえ・・・」
「間に合った・・・」
「なんで
 間に合ったんだろうねえ・・・」

と、茫然としていました・・・

その後我に返り、グータッチで健闘を称えあいました。
聞けば、皆さんお友達同士、ということではなく、
途中から、自然発生的に道連れになったとこのこと。

長い距離のレースは、こういうことあるんだったなあ。

わたしは、あの最後の坂でひとりきりだったら、
絶対制限時間内にゴールできていなかったと思います。
完走がすべてではないとは思いますが
やっぱり完走証をもらえると嬉しく思います。
(ギリギリであっても!)

御朱印を自分で押す
方式ではなくなりました
(ちょっと残念)



往復してみたかった峨山道、3年越しで往復できた!!




レースには絶対出たくない、怖い。
と思ってから3年。
今回思い切って出てみて、
あらためて自分とレースとの快適な距離感について考えました。

自分の実力がとっても低い、ということは大前提の上で、
やっぱりわたしは、
山は走りたくないな、と思いました。

ただ、レースというイベントを開催するために
道の整備をし、マーカーをつけて、
エイドを開設し、誘導するスタッフを配置し。
ものすごくたくさんの人出とご苦労が
かかっており、
そこに乗っかって遊ばせていただく。
心からありがたく感じました。

また、速くゴールできる人たち、そこを目指す人たちの、日頃の鍛錬や、レース当日のパフォーマンスの高さ。
それは本当に大変なことだというのは
かつて自分もその端くれだったので、よくわかっているつもりです。
とても尊敬しています。

自分の軸足は、そこの世界ではない、というだけ。

わたしにとって、レース(及びそこを中心にする)は
「たまーに訪ねていきたい
 好ましい異国」
なんだな、と思います。
その国には、たくさんの好きな友達がいて、来訪した時の、その国の風景や風俗は好ましい。
だけど異国だから価値観は異なる。
異邦人はわたしだから、異国にいるとき、わたしの価値観は、
その国のものにすり合わせる
努力がいる。

具体的には、
レースとはタイムが早い方が順位が上であることがより望ましいとされる。
わたしは実力的に早くゴールすることはできないし、また、早くゴールすることに重きを置いて参加するのは気が進まない。
けれどレース上の価値観は理解するし、制限時間があることも理解している。
なので、先を急ぐ人に迷惑をかけないように注意するし、自分も参加したならば、レギュレーションを遵守し、制限時間内に間に合うように、最大限努力したい。単に気持ちだけではなく、そのレースの内容が自分に見合っているのか正しく見積もりし、なんとかなりそうならば、具体的な戦略をもって、のぞむようにする。

…という感じです。

けれどそこは異国でありホームではない。
異国に旅するのも、母国にずっといるのも自分が決めていい。

一定の時間に、遠くまで自走で旅するには、
荷重をかけても
そこそこのスピードを保てて
持久することのできる、
走力・筋力・体力が
必要です。
レースという異国に旅するのも
自分の行きたいところに旅するのも
選択肢が多い方が楽しい。
安全に楽しむためには余裕がいる。
そのためにはがんばってトレーニングしなければ、
と決意を新たにしました。

少し負荷をかけたり、時間的な制約をかける。
そういうトレーニングも必要だな、と感じました。

よーく心を研ぎ澄ませて
自分の心の針が向く方へ。

そしてしたいと思ったことを
できるだけ実現できる力を持っていたいと思います。

感じたことをつらつら書き連ねてしまったのですが
伝わっていれば幸いに存じます。


ホンマに長くなってしまいましたが、
お久しぶりのレースレポ、
これにて完です。
長い記事をお読みくださり、
ありがとうございました!

レースシーズンインしましたね。
皆さんのご活躍とご武運を
心よりお祈り申し上げます。

あなた様も、わたしも、
それぞれの場所で楽しめますように。


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