麒麟はきた(ような気が)

2021年2月9日火曜日

よしなしごと 大河ドラマ

 


2020年の大河ドラマ「麒麟がくる」が
先日無事、最終回を迎えました。

大河ファンとして、今シーズンほど、
完走の危機を感じたこともありませんでした。

通常、全50回ですが、2020年夏のオリンピック分6回少ない予定の全44回。
そこへコロナ禍が襲い、撮影中断。

そもそも、
明智光秀で一年通すって、どうなるんだろう、
と思っていました。
戦国大河で、三英傑(信長・秀吉・家康)が出てくるなら、必ず登場する、明智光秀。
本能寺の変を起こした人物なので、もちろん重要な役回りなんですが
なんというか、流れの一部、というか。
織田信長に仕える前の人生は、
はっきりとはわかっていないらしく、
逆に言えば、そこんとこを膨らませれば、一年いけんのか、どうなるのかな、と。

これまでの光秀

色々な方が演じておられますね。
記憶にある範囲でいうと、

近藤正臣さん
(73年「国盗り物語」後年総集編で見た)

村上弘明さん
(96年「秀吉」)

萩原健一さん
(02年「利家とまつ」)

故・坂東三津五郎さん
(06年「功名が辻」)

鶴見辰吾さん
(09年「天地人」)

市村正親さん
(11年「江」)

春風亭小朝さん
(14年「軍師官兵衛」)

光石研さん
(17年 「おんな城主 直虎」)

国盗り物語以外は、リアル視聴してます。
他、五木ひろしさんなども
演じておられるんですね、なんと。
(89年「春日局」)
見てたはずなんだけど、ひろしの記憶なし。
ごめん、ひろし。

出番の多さで、丁寧に描写されるかどうかは左右されるかと思うのですが、
いくつかのタイプに
大別されている気がします。

野心系
 野心ギラギラで下剋上狙い。
 「天地人」「江」「利家とまつ」「直虎」

謹厳実直系
 教養があって実直、
 朝廷や幕府を重んじる方針?
 「国盗り物語」「軍師官兵衛」

実直・心優しい系
 実直で家族や、他の家臣思い
 「秀吉」「功名が辻」
(※個人の感想による分類)

これまでわたしは、
村上弘明さん演じた光秀が、一番好きでした。

本能寺への動機

実際にはわからないので、ドラマとしての観点から。

野心系の場合は、これはそのまま、下剋上狙いですね。
分かり易いし、描きやすくもあります。
ただ、情緒には欠けると申しましょうか・・・
記憶には残らないのですね、なんとなく。

俳優さんのイメージとか、書き方によりましょうけれど、心優しい系の場合、
主君・信長の横暴に耐えて耐えて耐えて、
断腸の思いで謀反を起こす、という感じで
村上弘明さん版は、出番の尺が長いというのも
ありましたが、
ひどい目にあった期間が長いので
「敵は…敵は、本能寺にあり」の名台詞を
絞り出すようにポツリというところでは
「わかる…わかるよ…」と
貰い泣きしそうになったものでした。

謹厳実直系の場合は、
これ以上、横暴を重ねさせる訳にはいかない、
という正義感ベース(「国盗り物語」)。
とても納得したのは、「軍師官兵衛」で
朝廷を重んじる光秀が、
信長が帝の譲位を意のままにしようとしていることを、これでいいはずがないと誅する、という動機でした。
真実かどうかはわからないのだけど
それまでの光秀を見ていると、
「この人ならそう考えるだろう」という説得力がありました。

本能寺の描き方

もうこれは大体において、
「かっこよく散る信長」を見せるものです。

テンプレとしては

夜、白い寝間着の信長の寝所に駆け込んでくるお小姓。
(大体、森蘭丸)
明智光秀殿、ご謀反!!てお小姓が呼ばわる。
または、
旗印は桔梗のご紋(明智の紋)でございます!!
と叫ぶ。
で、信長が「光秀か!」と言い
敵と切り結んで、
バタバタ倒していくんだけど、
やがて、刀折れ矢つきて、今はこれまで、
炎の中で、「じんせい、ごじゅうねん~」て
謡曲「敦盛」を舞いつつ、死んでいく。

というやつですね。

印象に残っているのは、萩原健一さん。
野心系なんだけど、本能寺で名乗りを上げる時は、声が裏返っており、見開いた眼は充血。
あーそりゃ謀反を起こすんだから、
眠れないだろうし、口はカラカラになるわね。
それまでが無表情の何を考えてるか
わからない人物だったので、そこで見せた人間くささがヤケにリアルでした。


水色桔梗 イメージ



そして今年

初回から欠かさず見て来て、
積み上げて来てよかった、本当によかった、
と思いました。

本能寺の動機には、
朝廷黒幕説、秀吉陰謀説、家康陰謀説等々
あるそうなのですが、どれも全部盛り。
この人なら平らかな世を作れるのでは、
と思い二人三脚で走ってきた信長が、
成功すればする程、怪物じみてくる。
全てのエピソードがもう、本能寺の変を
起こすしかなかろう、と追い詰めて行きます。
最後5回くらいは、どうにか違う世界線はないのか、と思うほど、
終わりを見るのがつらかった。

光秀を演じる長谷川博己さんは、
どちらかというと、微妙な狂気を含んでいる役が光る役者さんか、と思うのですが、
終盤どんどん壊れていく光秀。

そして迎えた、最終回本能寺の変。
こんなに切ない本能寺の変は
初めてでした。

割と序盤の方で、
「敵の名は、織田信長と申す」
と静かに言った時は、ああ…と思いました。
もう、引き返さないのね、と。

本能寺に攻め入られてからは、
テンプレート通りなのですが、
そこが逆に切なくて切なくて。

寺を囲む水色桔梗の旗印。
雨と降る矢が襲いかかり、
信長の肩にも刺さります。

「十兵衛か。」

全てを悟った信長は、高らかに笑います。
目に涙をためながら。
肩に刺さった矢を折り、
ベロリと血を舐めて、ひと言。

「…是非もなし。」

誰も見た事のない新しい信長を演じた、
染谷将太さんのコメント。

(そのシーン)
光秀に討たれるのはもはや本望。光秀が自分を楽にしてくれる。迎えに来てくれたといううれしさと切なさが複雑に出ました。そして、最後の戦を楽しもう。最後の戦が光秀なんて最高だ!
そんな気持ちでせりふを言い、肩に刺さった矢を折りました。

見ているこちら側にも、その気持ちは伝わりました、痛いほど。
信長は依存といっていい位、十兵衛(光秀)が大好きなのに。
なんでこうなっちゃうんだろう。
でもここまでの出来事を思い返すと
もう、こうなるしかなかった。

何回見たかわからない本能寺のシーン、
泣けちゃって仕方ないのは、初めてでした。

敦盛は舞いませんでした。
切腹も介錯もなし。
血を流して孤独に、死んでいく信長。
胎児のように丸まって。

結末

通常は、「三日天下」と言われるように、
超高速で戻ってきた秀吉に、山崎の戦いで破れ、敗走している暗い山の中で、泥にまみれて死んでいく、というのが
光秀のテンプレートでした。

ところが。

「…光秀は、敗れた。」
のナレーションのみで、シーンなし。
え???と思っていたら、なんと!!
次のシーンでは3年後。
光秀に良く似た武士を京の街角に見ます。
なんと、生存説かああーー!!!

これは、紛糾するんじゃないかな、
と思いましたが、
自分はどうか、と言えば。

「希望のある終わり方を見せてくれて
 ありがとう!!」と思いました。

わたしは光秀の死ぬところを
見たくなかったから。

ドラマ、として、
あの終わり方を選んでくれてよかった、
と思いましたし、
時間がたつにつれ、その思いはどんどん強くなっています。

さいごに

主要な役の女優の交代。
撮影中断。
戦国大河なのに密な撮影が難しい。
長い大河ドラマの歴史の中で、誰も経験したことのない大変なことが山積みの中、
よくぞ44回を走り通して下さった。
50回の尺で見て見たかった、と願うほどに
細部にまで作り手のこだわりが感じられた
大河でした。

楽しかった!!
本当に楽しい、44回でした!

あーありがとう、制作陣の皆様!!



この話題であと3回くらいは
色々話したいのですが自重(笑)。
ここまででも、十分暑苦しく、
大河愛を語り散らしてしまいました。

最後までお読み下さった、優しい方、
ありがとうございました。











QooQ