魔が差したショッピング

2021年1月18日月曜日

よしなしごと

 
月の東大寺


「これが終われば春が来る」と言われる、
奈良・東大寺お水取り。
本当は修二会(しゅにえ)更に正式な名称としては、十一面悔過(じゅういちめんけか)
という、行法のひとつです。

選ばれし11名の僧侶・練行衆が、
2週間以上に渡って、様々な儀式・法要をお勤めする、それはそれは過酷な行法だそうです。

11名が閉ざされた空間で生活を共にするため、コロナ禍において、どうするのか。
戦時中すら途切れなかった、1269回目の行法が途切れてしまうのか。
奈良県民としては動向を気にしています。

それはさておき、修二会の過酷さを思うとき、
必ずセットで思い出す出来事があります。

10数年前、ばーちゃんが亡くなってすぐ位。
ばーちゃんちの引き出しから5cm四方位の桐箱が出てきました。
開けてみると目薬のようなものが。

なんだろう…?

捨ててもいいか一応母に確認すると、
「あ!ばーちゃん捨ててへんかったんや!」
と、少し立腹している様子。
それはこんなイキサツの代物でした。

更に10数年前、
まだじーちゃんと二人暮らしだった頃。
ある日、訪れていた母が引き出しを開けると、この桐箱がありました。
しかも奥に隠すように置いていた。
ばーちゃんに、これは何か、と尋ねると、
言い淀んだ末に、

「ものすごく元気が出る薬やて。」

ハァ?ナニソレ?

更につっこんで聞くと、
セールスに来た人から買った、と。

「東大寺のお水取りのときに、
 修行のお坊さんも
 コレ飲んではるんや!」

ばーちゃんが、箱についていた紙を広げると
確かにお坊さんが五体投地している写真と
なんだかもう不老不死もイケるか、位の
効能が書いてありました。
(後年わたしも見て、死ぬ程笑った)

いや、もう怪しすぎるしコワすぎるやろ…

背筋が凍った母は、
絶対にすぐ捨てるように、二度と買わないようにコンコンと説教しました。

そして聞きました。

「…ほんで、なんぼしたんな?」

出た、関西人の常套句。

「…まぁ、ええやんか。」

と、目をそらすばーちゃん。
(見たんか)

この言葉が出る、ということは、
言えない値段、つまり高かった、ということですね。頑なに値段は言わなかったそうです。
「高うて、よう捨てんかったんやな」
と、母は怒り笑いしてました。

いや、しかし意外でした。
大正生まれのばーちゃんは、金勘定に
大変キッチリしており、ムダ遣いをことのほか嫌っていた。
そのばーちゃんが事もあろうに、
そんなインチキ臭が立ちこめるシロモノを買うなんてねぇ。
「東大寺でもご愛用!」のセールス句の
ヘンなインパクトと共に、深く心に残っています。

まあ、魔が差した買い物、てありますよね。
ばーちゃんの魔差しショッピングを怒っていた母ですが。

アレは去年の正月明けくらい。
母の家に行ったとき、割と深刻な感じで

「アンタに見せとかなアカンもんあんねん」

え?証券類?ジュエリー?
何かな?と思いながら連れて行かれたのは台所で、上の方の棚を開けるよう言われました。

開けてみると、そこには。
袋に入ったままの、多種の鍋が10個位。

こ、これは一体…?

「せやかて、今買うたら、何割引き、
 百貨店で買うより半値近う安い、て
 言わはるし、つい…」

もう何十年も前、お料理教室に行ったとき、
ウッカリ契約してしまったもの、らしい…

重いし、こんなようけ使わんし、
お父さんにもちょっと言えんくらい
高かったし、もったいのうて捨てられんで
気ぃついたら35年位経っとった、
アンタ使わへん?とのことですが、
わたしも10数個は、いらない…

…て、なんの負の資産やねん(笑)
コレも魔差しショッピングやね。

どこの奥様も、もー。

わたしなんて、しょっちゅうバクチ買いしてるから魔が差すヒマがないんだからねっ!
(いばるな)

しかし、今思っても
最大の魔差しショッピングは、
初売りの福袋買い、でした。

初売りの日は、朝8時には行列に並び
開店と同時にキロ4ダッシュ。
お目当ての店の袋をつかめたら、
その年はラッキー。
もちろん何が入ってるか、
なんてわかりません。

買うだけ買ったら、階段の踊り場で開陳。
踊り場のあちこちで物々交換の交渉が
繰り広げられていたものでした。

中身が分かる福袋なんて邪道オブ邪道。
中身が分からないからこその、「福」袋。

では成果の方は、と申しますと。
ちょっと人に言えないくらい
買っていたと思いますが、
お得だった、これは長く着れる、
というものに、

た だ の 一 度 も !!!

巡りあったことはありませんでした。
最大にアタマがおかしい、と思うのは、
それなのに、次の年も行っていた、
ということですね。
さあ、皆様ご一緒に。

ア ホ ち ゃ う か !!!

もちろん、もう25年以上、
買ってません(笑)。
でも、実は、電車の中で
中身が分かる福袋なんて邪道。
とおっしゃってる方がいらして
ココロのいいねボタンを100連打しました。

若いひとのお買い物は堅実ね?と思います。
けど、アホだけどあの狂騒の中の高揚感、
味わえないのは、ちょっとかわいそうねえ、
などと、昭和オンナはちらっと思ったり
するのです。


QooQ