夜に駆ける

2020年9月30日水曜日

トレラン 熊野古道伊勢路 山歩き

曽根次郎坂太郎坂

尾鷲市と熊野市の市境となる、
甫母(ほうじ)峠を越える道で、
かつて「志摩の国」と「紀伊の国」の
国境であったため、「自領・他領」がなまって「次郎・太郎」になったと言われています。

朝イチで越えた八鬼山は、最難所と言われていました。あわや火サス的展開か、というアクシデントはありましたが、今んとこ元気。
その後の2峠は、難なく越えて、
なんとなく自分の中で、「峠の距離感」
みたいなものができていました。
それなので、最難所を越えた今、「峠」はしんどくない、という感覚があり、この峠も、
難なく終わるだろうと思っていました。


集落を抜けて、曽根次郎坂太郎坂へ。



気持ちペースアップで。
アラ…?けっこう…キツい…?
思っていたより斜度がある。
そして、ここもまた、人がいない…
薄暗い中、黙々と上がって行きました。




峠によっては、「●●峠 10/20」ていう感じで
現在位置と残りの距離が分かるような
標識がある場合があり、ここにもその標識がありました。
自分の「峠の距離感」では、そろそろ峠が近いかな?と感じていたので半分弱かな?

すると。


「09/38」と書いてあって、二度見しました。
ウソやん…。

甫母峠は305m、全長は、5kmくらいあります。
今までの峠より長くて高いので、
これは実は道理なのですが、感覚がマイナス方向に裏切られて、ここでイッキにイヤになってきてしまいました。

時々出てくる、行き倒れた旅人の供養塔が
ヤケにリアル…

が、イヤになっても進むしかない訳で、
やがて甫母峠に到着しました。

よっし、あとは、下り!

ここはあまり石畳がないのですが、
木の根がむき出しで、気を使います。




おまけに、時折、また上がったりしてるせいで
標高が遅々として下がっていきません。
あと○キロの表示がある訳ではないので
残り感覚が完全に狂ってしまって、
加速度的に、不安感が募っていきました。

道は間違っていない。と思う。
嫌気はさしても、まだ、身体は動く。
ではなにがそんなに不安なのか、といえば。


人の姿を見ない。
自分がひとりだ。


ということでした。


この感覚は自分でも予想外で、
走るのも登るのもほとんどソロ。
ひととすれ違っても、挨拶くらいで
別にお話する訳ではないし、
今の自分の脳バグでは、楽しくお話が
できるかわからないのに
(ひとの話を聞くのは無問題、
 自分が話すのが不安)
なんだってそんな気持ちになるのか。


よくわかりませんが、
とにかく、人の気配を感じたい、
自分がひとりじゃないと感じたい。
その一心で、必死で下りを走り、
ようやく、標識が35/38くらいになった頃、
眼下に、二木島(にぎしま)の集落が
見えました。




集落に下りました。
ここから、すぐ、二木島峠の入口ですが、
薄暗い山道に、ひとりぼっちで入って
とぼとぼ進む。
誰もいないし、誰もわたしに気が付かない。
そう考えると、脚はまだいけるんですが、
もう峠に入るのはイヤだ!!
と思ってしまいました。


いや、だがしかし。
イヤだと言っても、どーすんのさ、自分?

地図を開いて冷静にルートを考えます。
峠を通らなければ、R311を通るしかない。
だいぶ、遠回りになります。




二木島の駅はすぐそこ。
もう熊野まで電車乗ろうよ…
そう思って、駅まで行き、時刻表を見ると。
12:30前の電車は行っちゃったから、
16:18まで、ないのね…
(13:00ちょい前時点)

17:00までに速玉にゴールはもう無理。
なら、ロードをゆっくり走ろう、
と覚悟して、スタートしました。


すると、小さなバス停が。
三重交通と書いてあります。
とても使いやすい、
三重交通のバス路線を調べるHPによると、
おお、なんとわりとすぐに、
自分が行くべき方向行きのバスが
来るらしいではありませんか。
周りに誰もいないため、半信半疑でしたが
果たしてバスがやってきました。


わたししか乗ってない小さなバスは
海岸沿いの道をゆっくり走ります。
漁港のバス停に停まったり、海水浴場の
バス停を通り過ぎたり。
今までとは違う景色の流れを眺めていると
気持ちがだんだん落ち着いて来て、
二木島峠はパスったけれど、残り2つの
峠は、自分の脚で越えよう、と思えました。

地図を確認して、R311の波田須の駅を
ちょっと越えたとこあたりで降りました。


よし、再開だ。

やれるやれる、大丈夫。

大吹峠・松本峠




道路沿いの広場になっている大吹峠入口。



205mですが、入口の標高がそこそこあるので、
わりとすぐ峠に到達。
この峠は珍しく、竹林でした。




順調に降りて、海沿いを走り、
いよいよ最後の峠、松本峠へ。




これでもか!と通ってきた石畳とも
もうお別れか、と思うと寂しいような。
135mの峠からは展望はありませんが、




下っていくと、ビューポイントがあり…
見えた!!浜街道!




下りきって、熊野市街へ。

浜街道

一瞬、ゴール感を醸しますが、ここからまだ
速玉大社までは、27km近くあります。




時刻は15:45前、もう今日の参拝は無理なので、
ちょこっと砂浜を歩いてみたり




獅子岩を見物したり




世界遺産・花の窟神社に立ち寄ったり
してプチ観光してみました。




さて、ここからはR42の舗装路を延々と
走っていきます。
どこまで行けるか。
不思議と平地の方が脚にこたえます…

元々途中からバスに乗る予定でしたが、
行けるところまでは行きたい。
だけどバスは1時間に1本なので
そこへん考えつつ。
結局、熊野から13kmくらいの阿田和駅を
少し過ぎたバス停から、バスに乗ることに
しました。

すごい勢いであたりは暗くなってゆき、
バスのライトが見えてきて、乗車。
バスは新宮駅行きですが、
最後は自分の脚で新宮に入りたいと
セルフ演出(笑)、途中で降りました。
まだ18時台ですが真暗。
知らない町の夜ランもまた一興でしょう。



2.5kmくらい走ったら、熊野大橋に
さしかかりました。
橋の途中で、新宮市。




やった!だいぶ遅くなっちゃったけど、
来たよー!!


あーもう終わっちゃうんだな、という
この気持ちを、ゴール前に持ったのは
いったいいつ以来なのか。


参拝はできないけど速玉大社まで行こう。
そして。
そして、ついに。


ゴール!熊野速玉大社!!




時計上は、尾鷲のホテルから70.86km。
うち、バスに計15kmくらい乗ってるので
自力移動は55kmちょい。


楽しかったー。
あー。楽しかったなあ。


そう思えて、嬉しい。
わたしは、大丈夫だ。


よかったー。




(続きます)

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